「ステンドグラスってどのようにつくっているの?」
「ステンドグラスの特徴や機能って何があるの?」
様々な建築物に入っているステンドグラスですが、作り方やデザインなど不明なことがあり、
欲しいけどどうしようかと迷っている方も多いはず。
そこで本記事では、ステンドグラスの老舗である当社が徹底的に解説します。
この記事を読めばきっとステンドグラスの魅力が発見できますよ。
ステンドグラスとは?
ステンドグラスとは、様々なガラスをカットし、鉛などで繋ぎ合わせ、絵付けや接着を表現したものです。
ステンドグラスの魅力は、光を通すことで生まれる色彩の美しさにあります。
太陽光がステンドグラスを通過すると、室内に幻想的な光と影が生まれ、空間を華やかに彩ります。
発祥の地は諸説ありますが、ガラスの製造はエジプトで始まったとされています。
その後ヨーロッパに広がり、宗教的なモチーフや物語が描かれるようになっていきます。
作り方は昔からほとんど変わっておらず、歴史や文化を感じさせる芸術作品としても高い評価を得ています。
近年では、住宅や公共施設のインテリアとしても人気があり、デザインはシンプルでモダンなものも多数作られ、空間作りに役立てられています。
ステンドグラスは、光を通すことで生まれる美しい色彩と、そこに込められた物語が魅力の芸術作品です。宗教的な空間だけでなく、現代の生活空間にも取り入れられ、私たちの心を豊かにする存在となっています。
ステンドグラスの材料
ステンドグラスを作るために必要な主な材料は、以下の通りです。
- アンティークガラス:マウスブロー製法ですべて手作りで作られるガラスの総称です。
- 型板ガラス:様々な色や模様のガラス板です。
- ケイム:鉛や真鍮で作られた、ガラスを繋ぎ合わせるための枠です。
- ハンダ:ケイムを溶接して固定するための金属です。
- カッパーテープ:ガラスとケイムを密着させるためのテープです。
- ハンダゴテ:ハンダを溶かすための工具です。
- ガラスカッター:ガラスを切るための工具です。
- フラックス:ハンダ付けをスムーズにするための液剤です。
- パテ:ガラスとケイムの隙間を埋めるための材料です。
- グラインダー:ガラスの切断面を滑らかにする工具です。
このような材料によって、ステンドグラスが組み上げられていきます。
ステンドグラスの構造
ステンドグラスは、 のガラスを鉛線や真鍮で繋ぎ合わせて作られる、美しい光の芸術品です。
その構造は、大きく分けて以下の2つに分類できます。
ケイム製法
断面がH型の鉛線(ケイム)でガラスを挟み込み、ハンダで溶接して固定する伝統的な手法です。
- メリット:丈夫で長持ちする。複雑なデザインに対応できる。
- デメリット:重量がある。鉛を使用するため、取り扱いに注意が必要。
カッパーホイル製法
銅テープをガラスに巻き付け、ハンダで接合する手法です。
- メリット:軽量で、繊細なデザインも表現できる。
- デメリット:ケイム工法に比べて強度がやや劣る。銅テープの剥離が起こる可能性がある。
ステンドグラスの構造の共通点
ステンドグラスの構造の共通点は以下の通りです。
- ガラス片:光を通す素材として、様々な色や模様が施されています。
- 繋ぎ材:鉛線や銅テープでガラスを繋ぎ合わせ、絵柄や模様を表現します。
- 固定:半田で接合することで、構造を安定させます。
- 厚み:ガラスの厚さは一般的に3~4mm程度です。
- サイズ:ガラスのサイズやパネルの大きさは、デザインによって様々です。
- 用途:窓、ドア、照明器具、装飾品など、様々な用途に使用されます。
ステンドグラスの強度
ステンドグラスは、ガラスと金属で構成されているため、一見すると脆く感じますが、構造によっては非常に丈夫な製品をつくることができます。
ステンドグラスの機能
ステンドグラスには主に以下のような機能があります。
1.採光:光を操り、空間を彩る
- 自然光を美しく取り込む:ステンドグラスは、色とりどりのガラスを組み合わせることで、太陽光を透過させながら、室内に美しい色彩を映し出します。
- 光の変化を楽しむ:時間帯や季節によって、太陽光の角度や強さが変化し、ステンドグラスを通して室内に映し出される光も刻々と変化します。
- 空間を明るく華やかにする:ステンドグラスを取り入れることで、室内は自然光がたっぷり降り注ぎ、明るく華やかな雰囲気になります。
2.遮蔽:プライバシーを守りながら光を取り込む
- 視線を遮る:色付きのガラスを使用することで、外からの視線を遮りながら、室内に光を取り込むことができます。
- プライバシーの保護:寝室や浴室など、プライバシーを確保したい空間にも適しています。
- 柔らかな光:直接的な太陽光を遮ることで、室内に柔らかな光が拡散し、快適な空間を作り出します。
3.装飾:空間を芸術的に演出する
- 唯一無二のデザイン:手作りのステンドグラスは、一つひとつが異なるオリジナルのデザインであり、空間を個性的に演出します。
- 歴史と伝統:古くから教会などで使われてきた歴史と伝統を持つ芸術品です。
- 空間のアクセント:シンプルな空間にも、ステンドグラスを取り入れることで、華やかで芸術的なアクセントを加えることができます。
ステンドグラスは、単なる装飾品ではなく、光を操り、空間を彩る機能性も備えた魅力的な素材です。採光、遮蔽、装飾という3つの側面から、その特長を最大限に活かすことで、住まいに個性と豊かさをもたらすことができます。
その美しい見た目と多様な機能から、古くから人々に愛され続けているのです。
ステンドグラスとステンドガラスって何が違うの?
「ステンドグラス」と「ステンドガラス」は、どちらも同じものを指す言葉で、違いはありません。
ではなぜ同じ言葉が存在するのでしょうか?
日本語への訳語は「ステンドカガラス」という訳語が一般的でしたが、「ステンドグラス」は英語の発音をそのまま日本語にしたもので、より一般的であり、英語の発音に近い言葉です。
時々、「ステンドグラス風」という言葉を耳にすることがありますが、これは本物のステンドグラスではなく、ガラスに樹脂で絵を描いたり、フィルムを貼ったりしてステンドグラスのように見せているものです。
本物のステンドグラスは、一つ一つ手作りで作られており、工業製品とは異なるオリジナリティ溢れる製品です。
ステンドグラスが教会で使われるのはなぜ?
ステンドグラスが教会で多く使われるのには、主に以下の理由が考えられます。
1.聖書の物語を視覚的に伝える
中世ヨーロッパでは、文字を読むことができない方が多かったと言われています。ステンドグラスは、聖書の物語を絵画のように表現することで、文字を読めない人々にも神様の教えを視覚的に伝える手段となりました。
また、複雑な教義を美しい絵画を通して分かりやすく説明し、信仰心を深めることに役立ったとされています。
2.神聖な空間を演出する
色とりどりのガラスを通して差し込む光は、神聖な雰囲気を醸し出し、人々の心を惹きつける効果があり、ステンドグラスの光は神聖なものと捉えられました。
教会内を天国に見立てて表現することで、人々に神秘的な体験を提供しました。
中世の教会は、窓が多く設けられていました。ステンドグラスは、採光を確保しながらも、教会内に神聖な雰囲気を作り出すための最適な手段でした。
3.技術の粋を集めた芸術
ステンドグラスの制作には、ガラスの着色、カット、鉛線による接合など、高度な技術が必要とされます。
教会は、当時の最高の技術を集結させた芸術作品を展示することで、教会の権威を高めることも目的としていました。
ステンドグラスは、単なる装飾品ではなく、教会において重要な役割を果たしてきました。
聖書の物語を伝える、神聖な空間を演出する、技術の粋を集めた芸術作品であることなど、その機能は多岐にわたります。
ステンドグラスを見ることで、中世の人々が神をどのように捉え、信仰生活を送っていたのかを想像することができます。
ステンドグラスで用いられるデザイン
ステンドグラスのデザインは、その時代や地域、宗教、そして個々の芸術家の感性によって多種多様ですが、一方で共通するモチーフやスタイルも存在します。
ステンドグラスのデザインの主な種類
宗教的なモチーフ
- 聖書物語:イエス・キリストの生涯、旧約聖書の出来事など
- 聖人:各教派で崇拝される聖人の肖像など
- 宗教的な象徴:十字架、天使、鳩など
自然モチーフ
- 花:バラ、ユリ、チューリップなど
- 植物:葉、蔓、樹木など
- 動物:鳥、魚、昆虫など
- 風景:山、海、空など
幾何学模様
- 円、三角形、四角形などの単純な形
- 格子模様、市松模様など
抽象的な模様
- 流れるような線、有機的な形
- 現代アートの影響を受けた抽象的なデザイン
各時代の特徴的なデザイン
各時代でもデザインに特徴がありました。
中世 | 聖書物語や宗教的な象徴が中心。 ゴシック様式では、尖頭アーチやステンドグラス窓が特徴で、 光を効果的に利用した荘厳なデザインが見られます。 |
ルネサンス | 人間の姿や自然を写実的に表現。 遠近法や陰影法が取り入れられ、より立体的な表現が試みられました。 |
アール・ヌーヴォー | 植物の有機的な形態や曲線美が特徴。 自然を模倣したデザインが多く、女性らしさや官能性を表現しています |
アール・デコ | 幾何学模様や抽象的なデザインが特徴。 機械美や近代性を表現し、シンプルで洗練されたデザインが好まれました。 |
ステンドグラスのデザインは、その多様性こそが魅力です。宗教的なモチーフから抽象的な模様まで、様々なデザインが存在し、あなたの個性を表現することができます。
設置場所や建物の様式、そして個人的な好みを考慮して、あなただけのオリジナルなステンドグラスをオーダーしてみてはいかがでしょうか。
教会以外でも使われるステンドグラス
ステンドグラスは、その美しい光とデザインから、教会以外でも様々な場所で利用されています。
住宅 | リビング、ダイニング、寝室、玄関など、様々な部屋のドアや窓に設置され、 空間を華やかに彩ります。 |
公共施設 | 駅、ホテル、レストラン、図書館など、人々が集まる場所に設置され、 快適な空間を提供します。 |
商業施設 | ショーウィンドウや内装に用いられ、 ブランドイメージの向上に貢献します。 |
美術館や博物館 | 幾何学模様や抽象的なデザインが特徴。機械美や近代性を表現し、 シンプルで洗練されたデザインが好まれました。 |
モスク | イスラム教の礼拝堂でも、 ステンドグラスが使用されることがあります。 |
神社 | 洋風建築や現代建築の神社では、 ステンドグラスを使用していることがあります。 |
墓 | 生前気に入っていたステンドグラスを飾る、 またはペットのお墓としても活用されるようになっています。 |
ステンドグラスの歴史を紹介
ステンドグラスの歴史を紹介していきます。
①ステンドグラス誕生の背景
ステンドグラス誕生は5世紀ごろとされています。
5世紀頃
フランスのリヨンにある教会で、ステンドグラスを見たという文献が見つかっています。
~9世紀頃
ドイツのロルシュ修道院から、キリストの頭部と思われるガラス片が発掘されました。これが現存する最古のステンドグラスと考えられています。
②中世のステンドグラス
中世になると、教会美術としての発展や技術の進歩が見られ始めます。
教会美術しての発展
聖書の物語を視覚的に表現し、人々に教義を伝えるために教会で広く使用され、ゴシック様式の建築と相まって、大きな窓に壮大なステンドグラスが飾られるようになります。
技術の進歩
ガラスの着色技術や鉛線による接合技術が発展し、より複雑なデザインが可能になりました。
③ルネサンス以降のステンドグラス
ルネサンス以降は世俗的な空間への広がりを見せました。
写実的な表現
ルネサンス期には、遠近法や陰影法が取り入れられ、より写実的な表現が試みられました。
様々なスタイルの誕生
アール・ヌーヴォー、アール・デコなど、各時代の様式が反映されたデザインが登場しています。
世俗的な空間への広がり
教会だけでなく、宮殿や邸宅など、世俗的な空間にもステンドグラスが用いられるようになります。
④近代以降のステンドグラス
近代以降は現代美術との融合や家庭など幅広い用途で楽しまれるようになっています。
現代美術との融合
現代美術の概念を取り入れ、抽象的な表現や実験的な素材を用いた作品も登場しました。
多様な用途
教会だけでなく、住宅、公共施設、商業施設など、様々な場所で利用されるようになります。
ステンドグラスを実際に体験しよう!
ステンドグラスを体験するには「観る」という方法の他、実際に作ってみるという方法があります。
体験方法は主に以下の通りです。
- ステンドグラス美術館に行く
- ステンドグラス体験会で実際に作ってみる
それぞれ見ていきましょう。
ステンドグラス美術館に行ってみよう
ステンドグラスのある美術館に行ってみましょう。
主要な美術館をいくつか紹介します。
那須ステンドグラス美術館
礼拝堂や華やかなランプのカラフルなステンドグラスが特徴の英国風の施設。
璃房ステンドグラス – ステンドグラスの制作・販売・教室を行っています。
川奈ステンドグラス美術館
礼拝堂を思わせる館内に、19 世紀および現代のステンドグラスが展示されている美術館。
パイプオルガンのリサイタルも催されます。
これらの美術館では、様々な種類のステンドグラスを見ることができます。
是非、足を運んでみてください。
ステンドグラス体験会で実際に作ってみる
最も手軽にステンドグラス作りを体験できる方法です。
ちなみに、当社でも体験教室を行っていますので、是非お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
ここでは、ステンドグラスに関してよく聞かれる質問と回答をまとめてみました。
ステンドグラスの値段はどれくらいするの?
ステンドグラスの値段相場は、既製品が数万円~数十万円程度、オーダーメイドが数十万円~数百万円程度になります。
ただし、その大きさやデザイン、使用するガラスの種類、制作技法などによって大きく異なります。
値段を決める主な要素は以下の通りです。
- サイズ:大きな作品ほど、使用するガラスや制作時間が増えるため、高価になります。
- デザイン:複雑なデザインや、多くのピースを組み合わせた作品は、制作時間がかかるため、高価になります。
- ガラスの種類:手作りのアンティークガラスなど、希少なガラスを使用すると、高価になります。
- 制作技法:伝統的なケイム製法やより繊細なカッパーホイル製法など、技法によっても価格が変わります。
- オーダーメイド:オーダーメイド製品は、デザインやサイズを自由に決められるため、既製品に比べて高価になります。
ステンドグラスは、世代を超えて受け継ぐことのできる芸術品と言えます。
ご自身の予算と希望に合った、素敵なステンドグラスを見つけてください。
弊社ではオーダーメイドのステンドグラスを数多く手掛けています。
ぜひお問い合わせください。
ステンドクラスの作り方は?
ステンドクラスの基本的な作り方は以下の通りです。
①デザインを決める
どんな模様や色合いのステンドグラスを作りたいか、図案を描きます。
②ガラスを切る
図案に合わせて、ガラスをカッターで切ります。ガラスは割れやすいので、注意が必要です。
③銅箔を貼る
カットしたガラスの縁に、銅箔と呼ばれる薄い銅テープを巻き付けます。この銅箔が、ガラス同士を繋ぎ合わせる役割をします。
④ハンダ付け
銅箔を巻き付けたガラス同士を、ハンダゴテを使って鉛線を溶かしながら繋ぎ合わせます。
⑤パテ処理
ハンダ付けした部分をパテで埋め、隙間をなくします。
⑥枠付け
作品の周囲を金属の枠で囲み、強度を出します。
必要な道具
- ガラスカッター
- 銅テープ
- ハンダゴテ
- 鉛線・真鍮
- パテ
- ハサミ
- ピンセット
- 保護メガネ
- 軍手
注意点
- ガラスは割れやすいので、取り扱いには十分注意しましょう。
- ハンダ付けの際は、高温になるので火傷に注意し、換気の良い場所で作業しましょう。
- 鉛を使用するため、作業後は手をよく洗いましょう。
まとめ
ここまで、ステンドグラスについて様々な観点から解説してきました。
ステンドグラスは、単なるガラス製品ではなく、光と色の芸術作品として、人々の心を魅了し続けています。
その奥深い魅力に触れつつ、あなたもステンドグラスの世界を楽しんでみませんか?